1.2 宮城県の気候について

 建物の設計をする際の基本は、その土地の気候条件を把握し、その特徴を最大限に生かすことである。そのこと可能とするためには気象データを詳細に分析し、環境設計上の地域区分を示したうえで、その地域区分に対応した設計上の考え方が示されていることが望ましい。

 報告書「地域の特性を生かした省に型復興住宅の環境設計」では、第ーに、拡張アメダス気象データを用いた統計処理を行い、東北地方における様々な気象要素の分布を図版として提供している。第二に気象要素の分布状況を分析することによって東北地方の気候特性の類型化を試みた上で、「震災復興住宅」の建設が想定される被災3県(岩手、宮城、福島)における環境設計上の地域区分を提案しているロ気象要素は、①気温、②絶対湿度、③水平面全天日射量、④日照時間、⑤下向き大気放射量、⑥風向・風速、⑦降水量(積雪深)である。ここでは、その中から東北地方と宮城県の気候特性について抜粋して以下に述べる。

 なお、ここで示す地域区分は次世代省エネ基準(平成11年)の6つの分類に基づいており、宮城県はⅢ地域である。現在の平成25年の新しい地域区分では8つの分類となっており、宮城県はⅣ地域であるので注意されたい。

1.2.1 東北地方の気候特性と気候区分

クラスター分析という統計的な手法により、東北地方をAからJの10の気候区分に分類し、図1.1に示す。以下に区分A-Jごとの気候特性を示す。

気候特性区分A次世代省エネ基準のⅣ地域に属し、東北地方の中では特異な気候を示す地点。冬場、極めて温暖で雪が少なく、日射利用が特に有効である。また、夏の暑さもやや厳しく、日射が極めて強いが、そこそこの通風に期待できる。
気候特性区分B次世代省エネ基準の主としてⅢ地域に属し、冬の寒さは東北地方の中では温暖といえるが、やや寒さの厳しいⅡ地域、極めて温暖なⅣ地域の地点も含まれる。積雪量が少なく、日射熱利用が極めて有効なのが特徴である。概して、冬の季節風はさほど強くない。また、夏の暑さはやや厳しいが、概して日射はさほど強くなく、そこそこの通風に期待できる。
気候特性区分C次世代省エネ基準のI地域~Ⅲ地域に属し、冬の寒さが厳しい地点が多いが、季節風がやや弱い。気候特性区分AやBに比べると積雪量もやや多いが、そこそこの日射熱利用に期待できる。夏の暑さと日射の強さはさほどではなく、そこそこの通風に期待できる。
気候特性区分D次世代省エネ基準のⅡ地域およびⅢ地域に属し、冬の寒さが厳しい。そこそこの積雪量があり、季節風が強い。冬場の日射熱利用にはあまり期待できない。夏期の暑さはさほどではないが、日射がやや強い。通風が極めて有効な地域である。
気候特性区分E次世代省エネ基準のI地域またはⅡ地域に属し、冬の寒さが厳しく、積雪量が極めて多いが、季節風は弱い。日射熱利用にはあまり期待できない。夏は涼しく、日差しの強さもさほどではないが、通風には期待できない。
気候特性区分F次世代省エネ基準のⅡ地域およびⅢ地域に属し、冬の寒さが厳しく、積雪量が多いが、季節風はあまり強くない。日射熱利用にはあまり期待できない。また、夏の暑さも厳しく、日差しも強いが、通風にはあまり期待できない。
気候特性区分G次世代省エネ基準のⅢ地域またはⅣ地域に属する日本海側の地域である。冬の寒さは、東北地方の中では比較的温暖と言えるが、やや季節風が強く、雪も少なくない。冬場の日射熱利用はさほど有効ではない。夏は暑さ、日差しとも、極めて厳しいが、そこそこの通風に期待できる。
気候特性区分H海に面し、冬の寒さがあまり厳しくないものの、季節風が極めて強い特異点であり、次世代省エネ基準のⅢ地域に属する。日本海側の地点では、積雪量が少なくなく、冬の日射熱利用には期待できない。また、夏はやや暑く、日差しが強いが、通風が極めて有効である。ただし、太平洋側の宮城県江ノ島はこの限りではなく、雪が少なく、暑さもさほどではない。冬の日射熱利用、通風に期待できる。
気候特性区分I次世代省エネ基準のⅠ地域あるいはⅢ地域に属する山岳の特異点である。冬の寒さが極めて厳しく、風も強い。積雪量も多く、日射熱利用には期待できない。夏期は涼しく、日差しも弱い。通風に大いに期待できる。
10気候特性区分J次世代省エネ基準のⅢ地域に属する特異点である。冬の寒さは東北地方の中では温暖といえるが、季節風が極めて強い。雪は少ないものの、日射熱利用にはあまり期待できない。夏は暑さがやや厳しく、日差しも極めて強いが、通風が有効である。

図1.1 東北地方の建築気候特性区分1)

図1.1 東北地方の建築気候特性区分1)

1.2.2 宮城県における熱環境設計のための地域区分の提案

  報告書「地域の特性を生かした省CO2型復興住宅の環境設計」では、被災3県における震災復興住宅のモデルプランの策定を目的としており、図1.1に示した東北地方気候区分図を元に、被災3県に対してより細かな地域区分を提案し、それぞれの地域に対する熱環境設計の要点を示している。ここでは、宮城県についてのみ示す。

 細分化後のそれぞれの地域における気候特性を考慮し、冬期の建築的対応として、①断熱、②防風、③雪対策、④凍結対策の重要度、⑤日射熱利用の有効性について取りまとめる。また、夏期の建築的対応として、⑥断熱遮熱、⑦日射遮蔽の重要度、③通風利用の有効性について取りまとめる。

 気候特性や冬期・夏期の対応策を◎、○、△、×(-)のグレードで表示しているが、これは、それぞれの地域区分に属するアメダス観測地点における分析指標の平均値を、全観測点の分析指標値分布の4分位数と比較して求めたものである。

 宮城県の地域区分を図1.2に示す。宮城県は大きく見れば、太平洋側の区分Bと内陸側の区分Cに分けられる。太平洋側は、冬の寒さは東北地方の中では温暖といえるが、やや寒さの厳しいE地域、極めて温暖なⅣ地域の地点も含まれる。積雪量が少なく、日射熱利用が極めて有効なのが特徴である。概して、冬の季節風はさほど強くない。また、夏の暑さはやや厳しいが、概して日射はさほど強くなく、そこそこの通風に期待できる。

 内陸側は、冬の寒さが厳しい地点が多いが、季節風がやや弱い。気候特性区分AやBに比べると積雪量もやや多いが、そこそこの日射熱利用に期待できる。夏の暑さと日射の強さはさほどではなく、そこそこの通風に期待できる。

図1.2宮城県における地域区分と熱環境の要点1)
図1.2宮城県における地域区分と熱環境の要点1)